【読書感想】僕とぼく
僕とぼく
2004年6月に長崎県佐世保市で起きた、小学6年生の女の子が同級生の女の子に、学校で殺害された事件。
被害者には二人の兄がいた。
事件から15年がたち、兄たちがどのような人生を歩んできたのかを、それぞれの視点で書いている。
センセーショナルな事件から紆余曲折を経て、本書の中ではそれぞれに前を向いて生きているように感じられ、それは救いに感じた。
言葉にならない思いをたくさん抱えているだろうが、淡々と客観的な視点で自分と向き合いながら、言葉がつづられている。
苦しい体験だろうが、それに挑むことで、次のステップを踏み出そうとしているのだろうかと感じ、その覚悟に心が震えた。
私たちは、日々起こるニュースをただ消費しているだけなので、お祭り騒ぎが終わり、報道されなくなると忘れてしまう。
時がたち、それが起こったことを知らない人が増えれば、その事実は無かったことになってしまう。
当事者にとっては、家族の生きた証として、いつまでも忘れられない出来事だが、時は止まらずに流れていく。
世間に注目されても、そうでなくても、地に足を着けて生きていきたいと思った。
時はいのちだ。
何かイベントがなくても、昨日と同じ代わり映えのしない今日でも、刻々と死につながっている。
今という時間は逆戻りしないのだから、穏やかに、感謝しながら生きようと思った。