インクルーシブ教育のこと(6)
保護者の不安に寄り添いたい
私がインクルーシブ教育がすべての学校で推進されていることを知っていただきたい、と考えている理由の一つに、「保護者の不安に寄り添いたい」という思いがあります。
これまでに書いてきたように、インクルーシブ教育は「障がいのある者と障がいのない者が共に学ぶ仕組み」です。
必ずしもどのような場合でも同じ教室で学ぶことが求められているわけではありませんが、できる限り配慮をしながら「共に学ぶこと」を目指しています。
そうなると、ついつい「障がいのある子ども」への配慮に注目が集まりますが、それ以外の子どもたちのことも忘れてはいけない、と考えています。
子どもたちはきっと、新しい仲間として、障がいのある子どものことも受け入れてくれるでしょう。
そしてお互いの違いを知り、相手を思いやる気持ちや、みんな違ってみんないいという価値観を育んでくれることでしょう。
教室がそういう学びの場になることを願っています。
しかし一方で、私が気掛かりなのは、保護者のことです。
以前の記事で、「私は障がいのある人との関わりがなく、どうしていいのかわからないという戸惑いがある」と書きました。
おそらく、私と同じように感じている保護者は、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
こんな声を聞いたことがあります。
「障がいのある子がクラスにいると、先生がその子にかかりっきりになってしまって、他の子はほったらかしになってしまうのではないか」
「うちの子のこと、ちゃんと見てくれるのかしら」
「たいへんな子が優先されるから、他の子は我慢させられるのではないか」
保護者は、インクルーシブ教育のことを知りません。
知らないことが、不安につながります。
不安はやがて、差別や排除につながっていきます。
そうした保護者の不安を、学校はしっかり受け止められているでしょうか。
学校は、目の前の子どもたちを大切に育ててくれています。
しかし、それが保護者に十分に伝わっていなければ、保護者の不安は増すばかりです。
せっかくの教育活動が、きちんと伝わっていないために不安を生んでいるとしたら、それはとてももったいないことですよね。
インクルーシブ教育に限らず、これからの学校教育では、保護者の不安に寄り添い、学校の思いを丁寧に説明し続けることが必要です。
学校は今とても忙しい、ということが社会問題になっています。
子どもたちのことで精一杯で、外に向けての説明や発信なんてムリ、という学校の声も聞きます。
それでも私は、学校が外に向けて開かれることを願っています。
学校の現状や思いが保護者にも伝わるように、また保護者の不安がやわらぐように、私にできることで応援していこうと思っています。