社会人になるあなたへ ~贈る言葉~(2)
春から社会人となり、教壇に立つすべての皆さんへ
これから社会に出て、教員としてスタートを切る皆さんへ、3つの視点から贈る言葉です。
経営者として贈る言葉
私は、小さな町工場の経営者です。
ですから管理職の立場でもあります。
その経験から、社会人としての皆さんに期待することをお伝えしたいと思います。
私が仕事をしていく上で大事だと思っているのは、「素直さ」です。
簡単そうに見えますが、素直であることは意外に難しいことなのです。
誰にでもプライドがありますし、それなりに経験を積んでくると自分のやり方ができてきます。
それをいったん横に置いて人から学ぶということは、だんだんできなくなってくるようです。
大人の中にも、素直に人の話を聞けない人はたくさんいます。
でもそれは、とてももったいないことなのです。
人の話を素直に聞ける人は、ぐんぐん伸びます。
若いうちはチャンスです。
知らなくて当たり前、できなくて当たり前なのですから、とにかく周りに聞く、指示を仰ぐようにすれば、いろいろなことを教えてもらえますし、それが自分の知識になります。
最近は「自分探し」ということで、自分に合った仕事を探すために転職を繰り返す人が多くいます。
合わない仕事を無理して続けて、身体を壊してしまっては元も子もないですし、自分に合う仕事があるのなら、それに巡り会えた方が幸せでしょうから、転職がいけないとは言いません。
ただそれでも私は、せめて3年はがんばってその仕事を続けてほしい、と思っています。
「石の上にも三年」ということわざがありますね。
その心構えは、人生に必要なものだと思うのです。
我慢を強いているわけではありませんが、我慢することを経験することは大事です。
野口芳宏先生の言葉を借りれば、「経験は意図的に積む」ことが大切です。
最初はわけもわからずに指示されたからやっていた作業も、「なぜそれが必要なのか」「なぜそうするのか」を考えながらやっていけば、そこから気付きが生まれます。
そして、続けていれば工夫も生まれ、必ず得るものがあります。
私たちのような一般企業は、利益追求が至上命題です。
利益を生み出さなければ、会社を存続していくことができません。
ですから経営者は、コストパフォーマンスを考えます。
学校は、そのシステムにはなじみませんね。
子どもたちは商品ではありませんし、利益を出さなくても公立の学校は潰れません。
しかしだからといって、「学校は学校のことだけで、一般企業みたいなことは考えなくてもいいよね」というのは、少し違うと思っています。
子どもたちはいずれ大人になり、社会に出ていきます。
そうすれば否が応でも、経済活動の中で生きていくことになるのです。
そのときに必要な力をつけるのが、学校なのではないでしょうか。
だとすれば、学校は無関係だと言っていられませんよね。
学校は社会とつながっているのです。
ですから、先生たちには、「子どもの生きる社会」のことを知っておいてほしいと思っています。
学校文化だけでなく、外の世界との接点を持ってください。
子どもたちは、我々大人の「未来の仲間」なのですから。